Tuesday, November 23, 2010

ベートーヴェン交響曲第9番。

ひとつ、夢が叶いました。

昔から音楽は大好きで、大学までピアノをやってきたけれど、3年前に「のだめカ ンタービレ」を見てからオーケストラに憧れ、みんながそれぞれのパートを演奏し、ひとつの曲を作り出すという、ソロで曲を完成することのできるピアノとは 違った団結とか繋がりとかそういうものを感じることができるオーケストラや吹奏楽に入ってみたかったなぁ、とずっと思っていまし た。

学生の頃に教会のクワイアに入っていた友達にそんな話をした時、クワイアもそれぞれのパートを練習して全部のパートが合わさってひと つの曲になった時はすごく感動するという話をしてくれて、そうか、今から楽器を始めることは難しくても歌があるのか、と、夢に近づける道がまだあることを 知って希望を持ったのを良く覚えています。

それから、カナダに来て、ナナが誘ってくれて入った教会のクワイア。言葉が違っても自分が一生 懸命練習さえすれば音楽は世界共通、アルトの仲間たちと一緒に練習をして、ソプラノ、ベース、テナーと一緒になって歌ったクリスマスコンサート、みんなか らもらった拍手と、一生懸命練習した達成感、そして教会に響き渡る私たちのハーモニー、いっぱい感動をもらいました。歌って素晴らしいなと。

この街に越してきて、やっとみつけた
コミュニティークワイア。
9 月に始めてから2ヵ月半、ベートーヴェン交響曲第9番、第4楽章の練習をずっとしてきました。始めはドイツ語なんてぜんぜん分からないし、カタカナを必死 で目で追うところから、家でもジュリがところどころ歌えちゃうくらい何度も歌って練習、耳でもいっぱい聞いた。練習に行く度に段々しっかりと曲になってき て、スピードもついてきて、さらに指揮者の指示に答えようとみんな必死で練習して、2時間半の練習のうち2時間15分が第4楽章の練習という日も何度も あって、本気で頑張ってきました。

「音楽は他のアートと違って、出来上がった作品を鑑賞し 感じるのではなくて、自分たちでその作品を実際に体験(演奏)することができる、それが素晴らしいところ。それは君たちが音楽を創り出す、ということ。」 とか、「ここは僕がそうしてほしいのではなくて、ベートーヴェンがそう望んでいる。」とか、練習の時に指揮者が話してくれることは、すごく心に響いて、驚 くべき耳の良さ、細かい指示、時にすごく厳しいけれど、おそらく楽譜に忠実に一生懸命教えてきてくれました。その、指揮者がオケの指揮を振っている姿をリハーサルで 初めてしかも間近で見て、天才だと思った。そんな人に出会えたこと、そしてそんな環境にいれることを幸せに感じました。

バ レエで知り合いになったお友達の話だと、このオケの4人はプロフェッショナルだけれど、あとはみんなアマチュアと言うか、お給料はなし、好きだから参加して演奏している、 ということ。「だから、好きで歌を頑張っているあなたと同じ立場なのよ。」と言われてから、よし、もっともっと頑張ろうと思って練習してきました。

おととい、午後に2回、地元のシンフォニーとのリハーサル。
私 たちクワイアは100人くらいいるので 人数が多すぎて会場の教会のステージには立ちきれず、ソプラノとアルトは2階のバルコニーから歌うということになって、私たちは2階へ。背の低い私たち (お友達も)は最前列、そして最前列は多分後ろのメンバーの視界の関係で座って歌うことに。

バルコニーからオーケストラを
見下ろす位置にいるので、第1楽章から3楽章までオーケストラの演奏の様子を上から見ることができて、お友達と一緒にもうリハーサルの時点で感激。素晴らしかった。オケ、すごい。そして、プロのソロ4人の歌声もすごい!!!
第1楽章から第4楽章まで通しでやった時、まだリハなのに感動して涙が出そうでした。

そして本番。
なんと、地元のシンフォニー史上初、Vice Regal Partyの方々がコンサートを聴きにきて下さると言うことで、Vice Regal Saluteを演奏したり、挨拶があったり、国歌を歌ったり、ととても特別な雰囲気の中はじまりました。
Vice Regal Partyの方々とは、ナナに電話して詳しく聞いたのだけれど、カナダは英国連邦の中の一つの国で、オタワ(首都)にエリザベス女王の代理がいて、カナダ 各州にもエリザベス女王を象徴とする代理人がいて(多分代わりに儀式に参加したりするのだと思うけれど)、来て下さったのはその方と奥さま。

そ して、彼らの入場の後に演奏されたVice Regal Saluteとは、まさに英国の国歌とカナダ国歌が半分こという曲。これ、この間のリメンバランス・デーでテレビでセレモニーを見ている時にも軍の方々が 演奏していて、イギリスの国歌とオーカナダが合わさってる不思議な曲だと思っていたところだったので、すごく納得。あの日は英国連邦の祝日だったし。

その後に歌った国歌「オーカナダ」。それを歌うことをリハーサルで知り、私はさびしか知らないので焦ってカンニングペーパー作成。恥ずかしいと思いつつ手に握った小さな紙を見ながら歌いました。住んでる国の国歌くらい覚えなきゃいけませんね。
そしてとうとうベートーヴェン交響曲第9番がはじまりました。
第 1楽章と第2楽章で気持ちが高ぶって、第3楽章のゆっくりで美しいメロディーに緊張し、これが終わってしまったらもう私たちの歌の番、今までやってきたこ とを出し切りたい、前回のコンサートのように緊張に負けてしまいたくない、いろんなことを考えているうちに第4楽章へ。リハのときよりもずっと早く感じました。

歌いだしたら、本当に一生懸命で緊張なんてすっ飛んで感じていられない、指揮者、オーケストラ、そしてクワイアの皆さんと一緒にこの曲をしっかり創りあげたい、という
気持ちで楽しくなって、無我夢中で歌いました。
日本では第9は人気だし、「歓びの歌」として知られているから、あまり歌のことは書かないけれど、歌詞は創造の神や人類愛を歌ったもの、何度も出てくる「Freude」は、日本語では「よろこび」。
歌っ ている途中に各パートがこの言葉をそれぞれ歌うところが何度かあって、コンサートの時、私たちにその言葉の入る合図をする指揮者の表情がそれこそ まさに喜びそのものの表情で輝いていて、うわぁ!っと引き寄せられるように私たちも会場の皆さんに、世界中のみんなに喜びを!って気持ちで歌えた気がし ます。指揮者ってすごい力がある、あの瞬間は今もすごく鮮やかに浮かんでくるけれど、とても印象的でした。

終わった時、みんなすごく晴れやかな顔をしていて、それも印象的でした。練習の成果を出し切った顔。
感動して涙が沸きあがってきました。隣のお友達が静かに私に「ね、泣いてる?」って。お友達も泣いてました。うんうん、と頷くことしかできなかったけれど、本当は嬉しくて抱きつきたかった(帰り際にビッグハグしました)
クワイアを始めた時に誘ったお友達、今回はアルトを一緒に歌いました。しかも隣で並んで。こんなに人生の宝物のような嬉しい機会を一緒に共有できたことがなんとも言えないくらい嬉しかったです。
ク ワイア自体には興味のない主人もオーケストラを聴くのは好きで、今回はどうしても聴きたいということで、聴きに 来てくれました。そうやって来れたのも、ジュリを夜7時から10時と言う遅い時間に預かってくださったお友達のご主人のおかげ。本当に、本当にありがとう ございました。
地元のアマチュアのオケとクワイアと言えど、チケットは$15~37もしたのに、街のお友達が何人も聴きに来てくれました。頑張ってねってメールや電話を下さったお友達も。すごく嬉しかったです。

ここで出会ったお友達皆さんにありがとうがいっぱいの夜でした。

さて、やった!という気持ちだったけれど、ベートーヴェンはどう思ったのかな。彼の思いに近い演奏が出来たのかな。
この曲を書いていた時はもうほぼ何も聞えなかったというベートーヴェン。
1824年、初演ではテンポを指示する役で指揮台に上がったとウィキに書いてあったけれど、自分の書いた曲が耳から聴こえてこないのはどんな気持ちだったんだろう、目で演奏を追う気持ちはどんなだったんだろうと思います。
これからも音楽に触れていたい、そう強く感じました。
こうやって書いていると、とんでもない量になってしまいそうなので、書き足りないことはいっぱいあるのだけれど、このくらいに。(十分長くて、しかも写真がなくてごめんなさい。)

ジュ リもいっぱい応援してくれていました。家で練習している時、「フロイデ」がうまく発音できると、「マミィ、今のはいい”フロイデ”だったね。」って言って くれたりして。まだ歳が小さくてコンサートには連れて行けなかったけれど、音楽のすばらしさが彼女にも伝えられたなと思っています。

3 comments:

Anonymous said...

ERIちゃん、こんにちは!
すごいね~!!読んでいて感動して涙が出てしまいました。第九は、一昨年までは年末に聞きに行き感動を味わっていましたから、その、演奏する側の立場にいたERIちゃんがどんなに感動したか・・・。お友達といくらハグしても収まらなかったのではないでしょうか・・。
素晴らしい体験をしましたね。
それまでの練習も大変だったことでしょうが報われましたね。お疲れ様でした。
      ユウとヒロとさくらのばぁばより

Anonymous said...

ERIちゃんこんにちは!
昨日、この欄に書き込みしたはずなんですが最後までちゃんとやっていなかったようですね。
凄い体験をしましたね。読んでいてじわーっとこみ上げてきました。一昨年まで何回か年末になると第九を聞きに行っていたのでその時の感動を思い出したことと、ERIちゃんは、演奏する側にいたんだと思うと心が震えてしまいます。単に練習の大変さとか、ドイツ語を覚えるとかそれだけのことではないですよね・・・・。すご~い!!の一言しかいえません。
これからの生活に自信となっておおいに生かされることでしょうね。
感動をありがとう!
ユウとヒロとさくらのばぁばより

eriko said...

ユウとヒロとさくらのばぁばさん。

こんにちは。お元気ですか。
コメント欄が少し操作が変わってしまい、せっかくいただいたコメントが表に出ないようになってしまっていました。こんなに遅くに返信することになり、ごめんなさい。

第九は本当に人生のいくつかのハイライトになること間違いなしな感動でした。こんなことに参加することが出来てなんて幸せだったと思っています。
ユウとヒロとさくらのばぁばさんは聴きに行かれていたんですね。私も今年の年末はうちの両親に薦めようかなぁ。

ジャンルは全く違いますが、ユウとヒロとさくらのばぁばさんがされているマラソンのゴールした時の達成感と感動は本当に大きなものだろうと感じています。
もう少し冬が続きますが、どうぞお体を大切に、またお会いできる日を楽しみにしています。